金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う
「なんて都合のいい話なの。子どのために、ぜんぶ許せっていうの!?」
「……虫のいいことを言っているのはわかっています。許さなくてもいいです。この子だけは、どうか、お願いします」

 伏せる彼女の腕の中で、赤ん坊はぎゃあぎゃあと泣き続ける。
 眞白はその泣き顔をじっと見つめた。

 命を人質にされたら、頷くしかない。
 そんなのずるい。

 だけど。
 眞白はまた虹夜を見た。

 赤ん坊の命まで奪ったとなれば、彼はきっと自分を責める。そんな彼を見たくない。
 彼はひとときでも自分に幸せをくれた。その彼に報いたい。
 眞白は落ちていた上衣を拾い、天冠を拾った。

「眞白様、なにを?」
 上衣を羽織る眞白に雨刻が尋ねる。
「私が舞います」
 震える声で言うと、雨刻は眉を寄せて眞白を見た。

「私も、小さい頃に少しだけ習いました。もう型もうろ覚えです。ですけど」
 眞白は天冠をかぶり、顎の下で紐を結ぶ。
「ありがとうございます!」
 子を抱えた女が、涙を流して礼を叫ぶ。

「このまま村を焼き払えば、殿下が排斥されかねません。どうかお願いします」
 雨刻の言葉に、眞白はごくりと唾を飲み込んだ。
 習ったのは、本当に小さい頃だけだ。
 嘘つきと呼ばれてからは舞を習えず、記憶を頼りに舞ってきた。

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