【マンガシナリオ】過保護なお兄ちゃんの溺愛から卒業できない。
第2話【卒業宣言】
○入学式後
講堂から出て並んで歩く朱梛と耀哉。
朱梛モノローグ:
「まさかの耀哉くんが同級生になりました――」
朱梛「耀哉くん、なんで受かったこと黙ってたの?」
耀哉「朱梛を驚かせたくて♡」
朱梛「あっそ……」
朱梛(はぁ……やっぱり私のこと子ども扱いしてるよね。でも、)
ひっそりと溜息を漏らす朱梛。
朱梛(正直嬉しい!! だって耀哉くんと同級生になれるなんて、思ってもみなかったし――……)
学生たち「すみませーん! サークルどうですか〜?」
たくさんの大学生に囲まれる朱梛と耀哉。サークルのチラシをたくさん押し付けられる。
学生A「テニスやりませんか〜?」
学生B「ぜひ野球部へ! マネージャーも募集してまーす!」
学生C「旅行サークルでーす! よろしくお願いします〜!」
朱梛(う、うわあ……っ)
いきなり話しかけられてあたふたしている朱梛。
学生D「てゆーか君1年生? めっちゃ大人っぽくない?」
学生E「しかもイケメンすぎなんだけど〜!」
ギャルっぽい女子大生にナンパされる耀哉。
耀哉「あー……俺今年で26なので」
学生D「えっ年上!? ヤバァ!」
学生E「ねぇ、ウチのサークル入らない!?」
耀哉「んー、考えとこうかな」
「「キャーー♡♡」」
周りにいた女子大生たちも耀哉に注目している。
「えっあの人26だって」「年上イケメン最高!」などの声が聞こえる。
朱梛(耀哉くん、めちゃくちゃモテてる!!)
朱梛(当たり前か……昔からモテまくってたし、彼女いたこともあったし……)
ズキンと胸が痛む朱梛。
朱梛(今更そんなことで落ち込むな! それに耀哉くんから卒業するって決めたじゃん!)
朱梛(耀哉くんは耀哉くんで大学を楽しみたいんだし、私だって……!)
大学生F「ねぇ、君〜」
チャラそうな男子大学生が朱梛に話しかける。
大学生F「今日新歓やるんだけど来ない?」
朱梛「え、でも入るって決めてないのに」
大学生F「新歓なんてゆるい感じで来ちゃえばいいんだよ。とりあえず来ない? あ、一応テニサーね」
朱梛「テニサーならチラシもらいました」
大学生F「あ、そことは別のとこなんだよね」
朱梛「そうなんですか」
朱梛(テニサーにも色々あるんだな)
大学生F「1年生はタダだからさ! とりあえず行ってみるだけおいでよ!」
グイッと朱梛の腕を掴む。
朱梛「あ、えっと……」
朱梛(ちょっと強引だな。でもここで断ったら感じ悪い?)
べりっと男子学生から朱梛を引き剥がす耀哉。鋭い視線で男子学生を睨みつける。
耀哉「この子は行かないから――、他当たってくれる?」
大学生F「あ、はい……」
耀哉の威圧に萎縮する男子学生。そそくさと逃げる。
ホッとする朱梛。
朱梛「耀哉くん、ありがとう」
耀哉「気をつけて。今のサークル、ものすごく評判悪いとこだから」
朱梛「えっ、そうなの?」
耀哉「テニサーならここかここかな。あとこの辺りのサークルもちゃんとしてるって評判だから、おすすめだよ」
朱梛「えっ……」
耀哉「あ、朱梛におすすめのサークルは既にピックアップしてあるから」
朱梛「な、なんで!?」
耀哉「だって今みたいに悪いサークルもあるし」
朱梛(耀哉くん、やっぱり私のこと子ども扱いして……!)
朱梛「いい! 入りたいサークルは自分で決めるから!」
耀哉「あ、朱梛!」
ムカムカしながら大股歩きする朱梛。
朱梛(もうっ、耀哉くんなんて知らない! 絶対耀哉くんよりカッコいい彼氏つくってやる!)
大学生「すみませーん」
朱梛「!」
○夜・居酒屋
フットサルサークルの新歓に参加した朱梛。私服に着替えてオシャレしている。
朱梛(勢いでフットサルサークルの新歓に来ちゃった……!)
先輩A「朱梛ちゃんだよね? 来てくれてありがとう! 楽しんでね!」
朱梛「は、はい……!」
朱梛(良かった、優しそうな人だ)
ハルカ「ねぇねぇ! 1年生?」
ナツナ「ウチらも1年だから話そ〜!」
朱梛「あっ、ぜひ!」
ハルカ「あたしハルカ」
ナツナ「ナツナでーす」
チアキ「チアキだよ〜!」
朱梛「私は一葉朱梛です。よろしくね」
チアキ「朱梛ちん! よろしく〜。そのピアスかわいいね〜」
朱梛「え、ほんと? 嬉しい」
ハルカ「朱梛は普段何してんの?」
朱梛「私は小説読むのが好きなんだ」
ナツナ「え〜マジメだね。ウチ活字苦手だわ」
チアキ「チアキも本とか読まなーい」
朱梛「あ、でも私が読むのライト文芸だから読みやすいよ」
ハルカ「ライト文芸? 何それ?」
チアキ「あー、ラノベってやつ?」
朱梛「いやラノベとはまた違うんだけど」
ナツナ「まー、どっちにしろ苦手かも」
チアキ「チアキもヲタクっぽいの苦手〜」
朱梛「……そう、だよね」
話が盛り上がらなくてショックと後悔の気持ちが同時にくる朱梛。
朱梛(この話、しない方が良かったかな。私は好きなんだけど……)
ハルカ「てかさー、朱梛さっきから全然飲んでないっしょ?」
朱梛「ジンジャーエール飲んでるよ」
ハルカ「じゃなくてアルコール!」
朱梛「私まだ未成年だし」
ナツナ「マッジメ〜! いいじゃん、そんなの。みんな飲んでるよ」
チアキ「おいしいよ〜? 朱梛ちんも飲んでみよ?」
朱梛「えっ、でも……」
朱梛(ここで断ったら空気悪くしちゃう?)
朱梛「……飲んでみようかな」
ナツナ「お、いいね〜」
先輩「あれ、もしかして朱梛ちゃん初飲み?」
朱梛「は、はい」
先輩「俺の味見してみる? レモンサワーだよ」
朱梛「えっ、えっと」
先輩「グイーッといっちゃって!」
朱梛(このまま飲むの!? これって普通? ど、どうしよう……)
横から腕が伸びてレモンサワーを奪う。
そのまま一気飲みする耀哉。
耀哉「ふー、ごちそうさま」
朱梛「耀哉くん!?」
朱梛(なんでここに!?)
ハルカ「え、イケメン……」
ナツナ「大人っぽい……」
チアキ「めっちゃタイプ♡」
耀哉に見惚れている三人娘。呆気に取られる先輩。
先輩にグラスを返し、朱梛の腕を引っ張る耀哉。
耀哉「すみませんけど、朱梛は連れて帰りますね」
先輩「えっ」
一万円札をテーブルに置く耀哉。
耀哉「これ朱梛の飲み代。お釣りいらないから」
朱梛「えっ、ちょっ」
耀哉「じゃ、この子は“お持ち帰り”するので」
ニコッと微笑み、朱梛を連れ出す耀哉。
キャーッ!という黄色い声が聞こえる。
○居酒屋外
朱梛「ちょっと耀哉くん! なんで?」
耀哉「未成年にお酒飲ませようとするなんて言語道断だよ。朱梛も何流されてるの?」
朱梛「っ……」
声を詰まらせ、ぎゅっと服の裾を握りしめる朱梛。
朱梛「ごめんなさい……」
耀哉「もうあのサークルには行かないでね。朱梛には向いてないと思う」
朱梛(そんな言い方しなくても……)
朱梛「……どーせ私はまだ子どもだよ……」
耀哉「朱梛?」
朱梛「そりゃあ耀哉くんから見たらまだまだ子どもだと思うけど、いつまでも子ども扱いしないでよ……っ」
泣きそうになる朱梛のアップ。
耀哉「別に子ども扱いしてないよ」
朱梛「嘘だよ、今だって勝手に迎えに来て」
耀哉「女の子が一人で夜出歩くんだから心配するでしょ」
朱梛「!」
耀哉「せっかく頑張って慶明に入ったんだから、朱梛に嫌な思いして欲しくないだけだよ」
朱梛「耀哉くん……」
耀哉「ほら、帰ろ」
優しく微笑んで手を差し出す耀哉。
ちょっと照れながら手を握り返す朱梛。
朱梛「……やっぱり子ども扱いしてない?」
耀哉「してないって。今日の朱梛、大人っぽくてかわいいしね」
朱梛「え……、ほんと?」
嬉しそうに頬を染める朱梛。
耀哉「――うん、かわいい」
朱梛「……あ、ありがと」※照れてる
耀哉「ねぇ朱梛――、朱梛の彼氏って俺じゃダメなの?」