今日も推しが尊いので溺愛は遠慮いたします!~なのに推しそっくりな社長が迫ってきて!?~
今日の服装はネイビーのノーカラージャケットに膝下丈のペンシルスカート。秘書という職業柄ジャケット必須の日も多いが、今の季節は暑くてつらい。

クールビズでラフな服装が許されている他部署の社員たちを横目に、芽衣子は白いハンカチで額の汗を拭った。

柔らかなブラウンカラーの長い髪はハーフアップにしてシュシュでまとめている。肌は丈夫で荒れることもないのでベースメイクはごくナチュラルに。知的、和風と評されることの多い切れ長の目元には優しいピンクベージュのアイシャドウ。鼻筋のハイライトと唇にのせたローズカラーのリップで華を足す。

これで、隙のない王道秘書スタイルの完成だ。

「おはようございます、芽衣子さん」
「おはよう。桃ちゃん」

席につくと、隣に座る後輩の桃香とあいさつを交わす。

『秘書室は女の園で大変じゃない?』とよく聞かれるが、今のところ人間関係は良好そのもの。

ふたつ年下の彼女とも、休憩時間が重なれば一緒にランチをする仲だ。どことなく妹に似ていることも親しくできている理由のひとつかもしれない。

まだ始業ベルが鳴っていないので、桃香と雑談をしながらのんびりPCを立ちあげてメールチェックを行う。

「そういえば芽衣子さん、金曜日の夜ってお時間ありますか? 一緒に異業種交流会に参加しません?」

異業種交流会。ビジネスの知見と人脈を広げるため……と銘打っているが、実態はただの男女の出会い目的のパーティーであることは芽衣子もすでに学んでいる。

彼女は愛らしい外見に似合わず、なかなかの肉食系女子でこの異業種交流会が大好きなのだ。

(そんなところも理衣子にそっくりなのよね)

 妹の理衣子と彼女は性格も生き方もよく似ていた。女としての人生を謳歌しているタイプで、芽衣子とは正反対。
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