契りの花嫁 ~冷たい夫が、私に恋をした日~
「その長男が、正妻を求めている。条件は……跡継ぎを産むこと。 金と引き換えに、華族の血を手に入れたいのだ」

私は何も言えなかった。

声を失くしたまま、ただ封書を見つめる。

それは、人生を他人の意志で塗り潰されるという現実だった。

「梢。頼む――おまえしか、もういないんだ。」

父のその言葉に、私はぎゅっと拳を握った。

涙が頬を伝うのを止められないまま、ゆっくりと、頷いた。

しばらくして、この家に南條家の御曹司がやってきた。

控えの間に通されたその男は、背が高く、細身で、着物の着こなしも洗練されていた。

浅く笑った唇の端には色気が漂い、鋭い目元には冷たさがあった。

――どう見ても、愛人の一人や二人はいそうな人。

「南條圭一郎だ。」

名乗りながら私を一瞥するその目には、感情らしきものは浮かんでいなかった。
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