契りの花嫁 ~冷たい夫が、私に恋をした日~
私の顔を見ても、何も思わない。
私という存在は、彼にとってただの取引の一部――

そう、ひとつの条件に過ぎない。

「白瀬家への融資は分かった。あとは君次第だ。」

そう言って、彼は椅子に座り、淡々とした口調で告げた。

私は唇をかみ、視線を落とした。

「……私に、断る選択があるのですか?」

静かに問うと、圭一郎さんはしばらく黙ってから、背を向けた。

「あるだろう。だが、君が選ぶとは思っていない。」

その背中は大きく、けれどどこまでも遠い。

私は立ち尽くしたまま、己の運命に、静かに目を伏せた。

そこへ、父が部屋に入ってきた。

「話は終わりましたかな?」

上機嫌な様子で、圭一郎さんと私の顔を交互に見ている。

その目には、安堵と下心が透けて見えた。

「婿殿は、いい男だ。」

父はにこにこと笑いながら言った。

どうやら、圭一郎さんの風格や物腰をすっかり気に入ったらしい。
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