影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
私の存在なんて、また邪魔者として扱われるだけ――。

その時だった。

「お義父さん、どうか、聞いて下さい。」

誠一郎さんが、深々と父に頭を下げた。

「俺に、梨沙さんを下さい。」

「……いっ!? り、梨沙を……?」

父の声が上ずる。

「既に、梨沙さんから結婚の承諾は得ています。」

「な、何を言ってるの!?」

梨子が信じられないという目で叫んだ。

「どうして!? あなたは私の婚約者だったじゃない!」

「違う。」

誠一郎さんは顔を上げ、はっきりと答えた。

「俺は、あなたと婚約した覚えはありません。――最初から、俺の心には梨沙しかいなかった。」

梨子は絶句し、その場で立ち尽くした。

「高嶋家の令嬢が、妾腹の娘などに負けるわけが――!」

「家柄ではなく、人柄を見ました。」

誠一郎さんの声は強く、そして優しかった。
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