影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
(……当然よね。政略結婚だもの。歓迎される道理なんてない。)

使用人に導かれるまま、玄関をくぐると、思わず息を呑んだ。

屋敷の中は、まさに和と洋の折衷だった。

障子の向こうには洋椅子が並び、漆塗りの床の上には西洋の絨毯が敷かれている。

大きな振り子時計の針が、静かに時間を刻んでいた。

高い天井、窓から差し込む光、知らない香り――

すべてが、私の知る世界とは違っていた。

(ここが、私の“嫁ぎ先”)

けれど、そこにあるのは“私の居場所”ではない。

私は、姉のふりをした女。

名ばかりの、偽りの花嫁。

「こちらへどうぞ。皆様、大広間でお待ちです。」

案内された先は、屋敷奥の大広間だった。

早々に婚礼の儀が始まると聞いてはいたが、まさか着いたその足で式に臨むことになるとは――

私の心臓は、まるで鼓のように高鳴っていた。
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