影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
引き戸が開かれ、中に入ると、そこはまるで異世界のようだった。

畳ではなく、洋絨毯が敷かれた床。

壁には洋画がかけられ、椅子がずらりと並んでいる。

その中央に、私を見上げる多くの目があった。

「まあ、綺麗な方……」

「さすがは高嶋家のご令嬢だ。」

「黒瀬の坊も、良い嫁を貰ったな。」

親戚筋とおぼしき年配の方々が、まるで器物でも眺めるように私を品定めしていた。

(どうしよう……見られている。全部見透かされてしまいそう。)

着ているのは、姉のために仕立てられた着物。

中身は“高嶋梨子”ではなく、“梨沙”である私。

息苦しさを必死に飲み込みながら、一歩、また一歩と前へ進んでいく。

そして――

ふいに、視界の端に、一人の男性が立ち上がった。

背が高く、すらりとした体躯。

礼装の羽織を纏いながらも、どこか西洋の香りを纏うその姿。
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