影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
身体の芯が熱くなる。

理性よりも、もっと奥にあるものが、彼を受け入れていた。

「……私を、お気に召して……?」

そう尋ねた声が震えたのは、この答えを、どこか怖がっていたからかもしれない。

けれど、彼はすぐに囁いた。

「――ああ、君でよかった。いや、というか……」

そのまま、私の中へとゆっくり入ってきながら、熱く、真っ直ぐに目を見て言った。

「君以外、欲しくない。」

その言葉に――私は、涙をこらえきれなかった。

(本当の名前で、呼ばれていないのに。でも、私は――この人に、愛されてる)

重なる身体。

あふれる吐息。

涙が頬を伝いながらも、私は小さく頷いた。

「……誠一郎さん……ありがとう。」

たとえこの名が偽りでも、この夜だけは、心から“彼の妻”でいたかった。
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