影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「君を初めて見た時……結婚を決めてよかったと思った。」

耳元で囁かれたその言葉に、私は思わず彼を見つめた。

「誠一郎さん……」

「俺を選んでくれて、ありがとう。」

そう言って、彼は私の頬に口づけ、そのまま唇を重ね、吐息が触れ合う。

「……っん」

肌が重なり、指がなぞるたび、甘い痛みが身体を駆け抜ける。

「ああん……」

声が漏れるたび、彼の瞳が熱を増していく。

「梨子……もっと欲しい。君が……欲しいんだ。」

――梨子。

(違う。私は……“梨沙”なのに)

名前を呼ばれるたびに、胸の奥が少しだけ痛んだ。

けれどその声には、嘘がなかった。

私という存在を、心から求めてくれていることだけは、確かだった。

「ああ、梨子……なんてきめ細かい肌なんだろう。心地よくて、いつでも触れていたくなる。」

彼の掌が、ゆっくりと胸を撫で、腹をなぞり、腰に添えられる。
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