影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
けれど――

「その前に……」

彼は言うなり、するすると浴衣を脱ぎはじめた。

「……新婚だな。」

その言葉と共に、裸の胸元を見せる彼に、思わず目を逸らす。

(朝から元気すぎます、誠一郎さん……)

昨夜、あれほど深く触れ合ったはずなのに――

彼の熱は、少しも冷めていなかった。

「恥ずかしい?」

「……いえ、ただ、びっくりしただけです。」

「なら……もう一度、君を愛してもいい?」

朝の光の中で囁かれたその言葉は、夜よりも柔らかく、けれど深く、私の胸に落ちていった。

私は、何も言わず、静かに頷いた。

それからというもの、誠一郎さんと一緒に食卓を囲んだり、天気の良い日は屋敷の庭をふたりで歩いたり――

ゆるやかで、温かな時間が少しずつ増えていった。

(結婚生活って、もっと堅苦しいものだと思っていたけれど)

「誠一郎、仕事だけの人だと思っていたのに……やはり結婚すると違うわね。」
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