影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「35のおじさんを捕まえて“坊ちゃま”はやめてくれよ。」

苦笑する誠一郎さんに、志乃さんはにこっと笑ったあと、目元を押さえ始めた。

「坊ちゃまは、変わらず坊ちゃまです……ずっと……あの頃から見てきた私には、そうとしか……」

そう言って、とうとうぽろぽろと涙をこぼす志乃さん。

「もうすぐ坊ちゃまのお子さんを見れるんですかね……ほんとうに……よかった……」

その姿に、私の胸もじんと熱くなった。

誰かに、夫のことをずっと大切に見守ってくれる人がいるというのは、なんて幸せなことなのだろう。

「泣くのは止めてくれ。」

誠一郎さんが、困ったように笑いながらも優しく声をかけると、志乃さんはハンカチで目元を押さえながら「そうですね」と小さく頷いた。

だがその次の瞬間、志乃さんはふところから何かをごそごそと取り出した。

「これを……坊ちゃまに。」

差し出されたのは、なにやら怪しげな小袋。
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