影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「えっ?」

「移ってもいい。いや、むしろ移ってしまえって思ってる。」

「ちょ、ちょっと何言って……!」

「君と同じくらい熱を出して、一緒に寝ていたい。」

真顔でそんなことを言うから、思わず咳き込んでしまった。

「ごほっ……」

すると、誠一郎さんは慌てて水を手渡してくれた。

「とにかく、今日だけは我慢する。……だが、明日も熱が下がってなかったら、添い寝くらいはするからな。」

「えええ……!」

苦笑しながらも、私はその言葉が嬉しくて――

胸の奥の熱だけは、冷めなかった。

でも、悪いことは続くものらしい。

私はついに熱を出して、布団の中で唸っていた。

――いらない子

――妾腹に仕えても、誰も感謝しないわ

熱の中で、何度も聞いた言葉が繰り返される。

私の頭の中に、あの人の声がこだまする。

「……あんたは私よ。」

お姉様――梨子の笑い声が響く。

その声に胸が締めつけられた。
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