影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
「当然だろう!」

父が睨みつけてくる。

「高嶋の血を引く子を――あんなふうに罵倒された黒瀬家に渡すなんて、許されない!」

すると誠一郎さんが、低く、しかしはっきりと返した。

「……渡す? まるで物のように言わないで下さい。」

「なに?」

「たとえ梨沙が身ごもっていなくとも、もう彼女は俺の妻です。心から愛している。彼女を一族に戻すつもりは、一切ありません。」

「誠一郎さん……」

私はその言葉に、胸が熱くなる。

「それに、万一子ができていたら――」

誠一郎さんは視線を真っ直ぐに父に向けた。

「その子は、俺と梨沙の“黒瀬の子”です。高嶋の名前を、使わせるつもりもありません。」

「なんですと……」

父が唖然とした顔をする。

「梨沙。お父さんの腕を払うんだ。」

誠一郎さんは腕を広げて私を待っている。

「梨沙。君の意思で俺の元へ来るんだ。」
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