小夜啼鳥

サヨナキドリ


古海 七帆(うるみ ななほ)。
家は小さな二階建てで小さな庭がある。
ごく普通の一般的な家庭。

父は会社で係長という微妙な中間管理職。
母は専業主婦。
生活は苦しいけれど、良い所の生まれで働くのは無理だから、しょうがない。

それを甘やかすような朝の光景に、慣れ始める自分。
狭い台所では優雅な朝食中の両親と……流しに立つ父と同年代の男性。

「おはようございます。」

私の挨拶に振り返って、おじさんは穏やかな笑顔。

「おはようございます。お嬢様。」

挨拶の後、丁寧に深々とお辞儀。
見慣れた風景。

止めて欲しいと何度も言ったのに。

「愚息が何か失礼を致しましたか?」

私の傍に姿が見えないことで、怪訝な表情を見せる。

「いいえ。何も。」

私は父に視線を向ける。

「おはよう。ケンカは駄目だぞ、未来の婿だからね。」

「あらあら、パパったら。うふふ。喧嘩するほど仲が良いのよ。ねぇ?」

ウフフ……
口元が引きつりながら、目だけは笑っている様に見えるだろうか。

私は、この家が嫌いだ。

風間 藤九郎(かざま とうくろう)。
幼馴染を未来の婿にしようとする環境も。


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