小夜啼鳥
「藤九郎は、先に学校へ行ったわ。……彼女が出来たの。」
私の言葉に、3人が固まった。
そうだろう。
それが狙いで、私は嘘をついたのだから。
「朝食はいらない。おじさん、いつもありがとう。お弁当だけもらって行くね。行ってきます。」
早口で言い終え、私は学校へと向かった。
父方は普通の家庭。
母方はお金持ち。だった。
「七帆(ななほ)。約束は守れよ。」
家から出て、角を曲がったすぐに待ち伏せしていたのはウワサの藤九郎(とうくろう)。
「約束?何の事かしら。うふふ。さぁ、愛しの彼女が待っているわよ。急がないと、『何も』残らないかもしれないわね。」
私は突き放すように、彼と視線を合わせずに通り過ぎながら言い捨てる。
約束など。破る為にするのよ。
過去に言った事を守るなんて、純粋だからじゃないわ。
一番よく知っているのは藤九郎、あなたじゃない。
私も巻き込まれただけ。
怖いのよ、変わっていく事が。
変わらないと思っていたことが覆る。
望んでいない未来を押し付けられて。
望んでいたことを裏切られるくらいなら、私は自分を欺く方を選ぶわ。