奪う
女性客が店内を後にし、後輩と二人だけの時間が再び訪れた。彼は作業する手を止めない。商品の整理が終わったら清掃でもするかと次の仕事のことを考えながら、乱れている商品を黙々と整えていった。
レジにいた後輩が売場に出た。突っ立っているわけにはいかないと思ったのだろう、後輩も仕事に着手し始める。
口数の多いちゃらんぽらんな男だが、著しく仕事に不熱心というわけではなかった。ヤンキーや不良とは異なる属性で、決して悪い人間ではない。後輩は善人であるため、悪人を許すこともきっとない。強盗犯からの暴力には屈してしまったが、逃走を図った全裸男に関しては体を張って捕らえた実績を持っている。正義感や責任感が強くなければ、逃げた犯罪者を咄嗟に追いかけて捕まえるという危険な行為はできないだろう。強盗の被害に遭った際に何もできなかったことを悔いた上での深追いだったのかもしれないが、理由は何であれ、後輩は人のために動ける人間だ。どこからどう見ても、彼とは正反対の人間だった。
真人間である後輩が慕う先輩に扮する彼は、唇を真一文字に引き結び、流れ作業のように淡々と簡単な仕事をこなし続けた。
商品であるお菓子を前出ししている最中、どこからともなくふわふわと飛んでやってきた小さな黒い物体が視界に映り込んだ。彼は目で追う。今の時期になると非常に鬱陶しい蚊だった。女性客が扉を開閉した際に侵入してきたのかもしれない。
人よりもムカデよりも遥かに極小な蚊であっても、吸血しようとしてくる時点で殺す以外の選択肢はない。
彼は蚊を刺激しないように緩慢な動作で両手を広げた。タイミングを見計らい、挟み込むようにして叩き殺す。狙いは命中し、潰された蚊が真っ逆様に落ちていく。一発で仕留められたことに気分よくなりながら、彼は床に落下した蚊を摘んでゴミ箱に捨てに行った。
レジにいた後輩が売場に出た。突っ立っているわけにはいかないと思ったのだろう、後輩も仕事に着手し始める。
口数の多いちゃらんぽらんな男だが、著しく仕事に不熱心というわけではなかった。ヤンキーや不良とは異なる属性で、決して悪い人間ではない。後輩は善人であるため、悪人を許すこともきっとない。強盗犯からの暴力には屈してしまったが、逃走を図った全裸男に関しては体を張って捕らえた実績を持っている。正義感や責任感が強くなければ、逃げた犯罪者を咄嗟に追いかけて捕まえるという危険な行為はできないだろう。強盗の被害に遭った際に何もできなかったことを悔いた上での深追いだったのかもしれないが、理由は何であれ、後輩は人のために動ける人間だ。どこからどう見ても、彼とは正反対の人間だった。
真人間である後輩が慕う先輩に扮する彼は、唇を真一文字に引き結び、流れ作業のように淡々と簡単な仕事をこなし続けた。
商品であるお菓子を前出ししている最中、どこからともなくふわふわと飛んでやってきた小さな黒い物体が視界に映り込んだ。彼は目で追う。今の時期になると非常に鬱陶しい蚊だった。女性客が扉を開閉した際に侵入してきたのかもしれない。
人よりもムカデよりも遥かに極小な蚊であっても、吸血しようとしてくる時点で殺す以外の選択肢はない。
彼は蚊を刺激しないように緩慢な動作で両手を広げた。タイミングを見計らい、挟み込むようにして叩き殺す。狙いは命中し、潰された蚊が真っ逆様に落ちていく。一発で仕留められたことに気分よくなりながら、彼は床に落下した蚊を摘んでゴミ箱に捨てに行った。