奪う
 トイレの前で血塗れの穴だらけになって死んでいるユウコを一切振り返ることもなくリビングに戻ると、カナデが冷蔵庫からプリンを二つ取り出しているところであった。

「ミコトさんの分です」

 扉を閉めてテーブルの前に移動したカナデが、角を挟んで隣同士にプリンを置きながら言った。蓋の上にはプラスチックの小さなスプーンが乗せられていた。

 カナデはソファーのある側に腰を下ろす。彼はいつものように対面に座ろうかと思ったが、わざわざプリンを移動させるほどその位置に拘っているわけでもないため、大人しくプリンに合わせて腰を落ち着けた。

「お疲れ様でした。ミコトさんのおかげで、せっかく貰った金を毎月返す必要がなくなりました」

 人を殺した彼を労い、カナデはプリンの蓋を開けた。スプーンで中身を掬って口に運ぶ。彼も蓋を開け、一仕事終えた後の褒美のように甘いスイーツを食した。リビングの外や彼の服は血生臭いままだが、それでも、久しぶりのプリンは確かに美味かった。

 二人は暫し無言で食べ続け、カナデが最初に容器を空にした。遅れて彼も食べ終える。テーブルの上に空の容器が二つ置かれた。それを見計らったように、カナデが徐に唇を開いた。

「ミコトさん、次もまた、お願いしていいですか?」

 主語はなかったが、なくても伝わった。次もまた、金蔓を殺してくれないか。カナデはそう言っている。彼が人を殺すことをやめるつもりがないように、カナデもまた、人を騙すことをやめるつもりはないようだ。生粋の極悪人同士であった。

 彼はカナデと視線を絡ませた。お願いしていいかと尋ねておきながら、胡乱げなカナデの表情からは拒否はさせないといった圧を感じた。
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