奪う
◇
信頼させておいて派手に裏切る行為は、程度の違いはあれど詐欺に該当する。彼は俗に言う殺人鬼であって、そのような詐欺師ではなかった。
彼の殺しは、相手が自殺志願者であると彼自身が信じ、相手からも殺してくれると信じてもらうことで初めて成り立つものだった。どちらかが疑っている状態では成し遂げられない。
今回の場合であれば、相手の方は彼のことを信じ切っているが、途中で疑いを挟んでしまった彼は、相手を信じ切れずにいる。そして、何も進展せずにいる。
慎重になりすぎていると思わないでもないが、人を殺しに行くのだから仕方がない。殺したくてたまらなくとも、欲に負けて思考を停止するわけにはいかなかった。
しかし、もう、腹を括るしかないだろうか。最初に、これはきっと大丈夫だと候補に残した自分の直感を信じて、カナデを殺しに行くしかないだろうか。
信じるか、信じないか。様々なパターンを想像し、懊悩しても、結局はそのどちらかしかない。殺しに行かずに後悔するより、殺しに行って後悔する方がずっといい。彼は人を殺したいのだ。逮捕云々は二の次だ。
仮にもしこれが、警察が関わっている誘き出し捜査であれば、夜だったらいつでもいいとは言わず、予め日付や時間を指定してくるのではないか。いつでもいいでは、毎晩警戒しなければならなくなる。非効率だ。
時間をかけてよく考えた末に、彼は覚悟を決め、仕事が休みである今日、車を走らせることにした。
ナビを操作し、目的地をカナデの住所に設定する。何度確認しても、女の住所と同じ県だった。
気が変わってしまう前に、彼はギアをパーキングからドライブへチェンジする。足踏み式のサイドブレーキを解除してアクセルを踏み込み、弱気な心に鞭を打って強気に車を発進させた。その場から動かして道路に出てしまえば、あとはもう行くしかないという気にさせられる。
信頼させておいて派手に裏切る行為は、程度の違いはあれど詐欺に該当する。彼は俗に言う殺人鬼であって、そのような詐欺師ではなかった。
彼の殺しは、相手が自殺志願者であると彼自身が信じ、相手からも殺してくれると信じてもらうことで初めて成り立つものだった。どちらかが疑っている状態では成し遂げられない。
今回の場合であれば、相手の方は彼のことを信じ切っているが、途中で疑いを挟んでしまった彼は、相手を信じ切れずにいる。そして、何も進展せずにいる。
慎重になりすぎていると思わないでもないが、人を殺しに行くのだから仕方がない。殺したくてたまらなくとも、欲に負けて思考を停止するわけにはいかなかった。
しかし、もう、腹を括るしかないだろうか。最初に、これはきっと大丈夫だと候補に残した自分の直感を信じて、カナデを殺しに行くしかないだろうか。
信じるか、信じないか。様々なパターンを想像し、懊悩しても、結局はそのどちらかしかない。殺しに行かずに後悔するより、殺しに行って後悔する方がずっといい。彼は人を殺したいのだ。逮捕云々は二の次だ。
仮にもしこれが、警察が関わっている誘き出し捜査であれば、夜だったらいつでもいいとは言わず、予め日付や時間を指定してくるのではないか。いつでもいいでは、毎晩警戒しなければならなくなる。非効率だ。
時間をかけてよく考えた末に、彼は覚悟を決め、仕事が休みである今日、車を走らせることにした。
ナビを操作し、目的地をカナデの住所に設定する。何度確認しても、女の住所と同じ県だった。
気が変わってしまう前に、彼はギアをパーキングからドライブへチェンジする。足踏み式のサイドブレーキを解除してアクセルを踏み込み、弱気な心に鞭を打って強気に車を発進させた。その場から動かして道路に出てしまえば、あとはもう行くしかないという気にさせられる。