近くて遠い幼なじみの恋~私の大好き過ぎる片思い日和~
「また懲りずに怒られたの?」

「今日は活きの良い鯵(アジ)入ってるよー」

鯵を片手に近所に住む同級生の竹下佳奈(たけしたかな)にお勧めする。

今朝水揚げされた新鮮な物を父親が買い付けて売っている。
【魚幸(うおこう)】創業80年の地味で古いお店だけど私は好き。

「朝どうしても起きれないんだよね…」

佳奈は私のお勧めを「3匹」と言って溜息を吐いた。
新鮮な鯵を秤にのせてグラム数を確認。
シールでプリントされた金額をビニール袋にペタッと貼る。

「それ、魚屋さんには痛くない?」

「うん!絶対に朝から市場には行けなーい」

朝が早い魚屋に産まれて25年。
幸こと日向幸(ひなたさち)は1度も1人で起きれたことがない。

「絢(あや)くんも大変な幼なじみ持ったね…」

そう言って商店街の裏にある丘を見上げた。

丘の上に見える【響(ひびき)】はミシュランガイドに星付きで掲載される高級旅館。

先代、先々代の旦那様達から魚を購入して貰ってる。
高級旅館なんだから板前さんが自分で買い付けに行けば済む話なんだけどそこは祖父達も幼馴染の仲で今も続いてる。
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