逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。

3.誰が一体悪者なのか





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冬空の下、籠から一枚ずつ使用人の服を出し、伸ばしたり、振ったりしながらシワを伸ばす。
シワを伸ばし終えたらハンガーへ。それを物干し竿にかけて、もう一度初めから。

こんなことをもう何度も何度も繰り返しているが、洗濯物はまだ終わりそうにない。

私は今日もヴァネッサ様に言い付けられて、使用人の服を南棟の端で1人で干していた。

時刻はまだ10時くらいだろうか。
あと1時間後には最初の授業が始まる為、早く終わらせたいが、今日もギリギリになりそうだ。

本当はこんなことなんて今すぐにやめて、勉強の予習復習がしたい。
だが、ヴァネッサ様には逆らうことができず、できないのが現状だ。

家事は男爵家にいた頃、お母様やお父様とたくさんしてきたので、苦ではないが、勉強に家事に追われる日々は少々疲れるものがある。
おまけにその合間を縫うように気の抜けないアルトワ夫妻の相手をし、セオドア様の嫌がらせや嫌味に付き合うとなると、さすがに体力の限界だった。



「…はぁ」



やっと半分終わった洗濯物を見てため息を吐く。
意識を失うほどの毒を盛られてもう3日が経った。

私、リリーを囲う環境は相変わらずで、優しい存在はアルトワ夫妻くらいしかいない。
あとはどれもこれも厳しく、今日も絶賛その厳しさの中で洗濯物を干し中だ。

だが、しかし、倒れてから一つだけ変わったことがある。
まだ3日しか経っていないので断言できないが、セオドア様の嫌がらせの中に私に毒を盛るという項目がなくなったのだ。
ここ3日間恐る恐るいろいろなものを口にしたが、どれにも毒は入っていなかった。



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