逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。




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気まずすぎる夕食を終えた後、私は私に与えられたレイラ様の部屋で、明日やる勉強の予習と今日の勉強の復習を行う為に机へと向かっていた。
白色と星空のような深い青色の家具で統一されたレイラ様の部屋は、1週間経った今でもあまり落ち着かない。

男爵家にいた頃は必要最低限のごくごく普通の家具たちに囲まれて生活していた。
それが今ではこんなどれもとても高そうなものばかりに囲まれて生活しているのだ。
どこかふわふわして落ち着かないのも無理はない。



「…はぁ」



そんな落ち着かない部屋で私はじっとノートを睨みつけ、今日も深いため息をついた。

…わからない。わからないから頭に全く入ってこない。

ノートとテキストを交互に睨みながら、何となく必要そうなところをノートに書き写してみたり、テキストに違う色でマークを付けてみたりしてみる。
だが、それが頭にすんなり入ることはない。

私は貴族の娘とはいえ、没落寸前の男爵家の娘だ。
ほぼ平民と言っても過言ではない。

ごく一般的な貴族は6歳ごろから家庭教師をつけ、15歳になるまで家庭内で教育を受ける。
そして15歳から3年間、王立学院に進学する…らしい。

対する私たちのような没落寸前の貴族や平民は生活の中で生きる力を学び、同じく15歳から3年間、各地域運営の学校へ通うようになっている。

私たちと由緒正しい貴族では学び始める時期も、学ぶ量も学ぶことも全部が全部違うのだ。

一応記憶喪失、という設定があるので、6歳から学ぶことを順を追って学んでいる最中だが、それでも難しすぎる内容に私はいつも悩まされていた。



「…はぁ。頭入んない」



もう勉強なんてやめてしまいたい。
美しく広々とした机に並ぶノートとテキストを天高く放り投げてしまいたい。

けれどそんなことをする暇があるのならば勉強をしなければ。
完璧なレイラ様になる為には勉強は必須科目なのだ。




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