逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。
ごめんなさいね。と心の中でセオドアに適当に謝って、すぐにレイラ様らしい微笑みを浮かべる。
「…まさかあのくまくまがシャロン家の傘下とは知りませんでした」
「まあ、公には言ってないしね。オープン前の訪問では、全ての味をぜひ食べて欲しいんだって」
「そ、それは本当ですか!」
ウィリアム様の言葉に思わず目を輝かせる。
な、何と素敵なご提案!オープン前に全種類を食べられるなんて!夢しかない話!
「姉さん」
嬉しくて嬉しくてニヤニヤしていると、また目の前にいるセオドアに睨まれた。
今度は酷く低い「姉さん」付きだ。
そんなセオドアに私は「…ごめん」と小さく笑いながら謝罪した。
わざとではないんです。
ウィリアム様のお話が素敵すぎるんです。
「それでレイラ、そのお店に一緒に行かない?」
「ぜ、ぜひ!行きましょう!」
喜んですぐに頷いた私にウィリアム様が「じゃあ決まりだね」と優しく微笑んでくれる。
「いつ行こうか?来週の水曜日の放課後と日曜日なら俺は終日大丈夫だけど」
「…そうですね。早く行きたいですし、水曜日の放課後は…」
「水曜日はダメだ。僕、予定あるから」
早速、一緒に行く日を決め始めた私たちだが、そこに何故かセオドアが冷たい表情のまま割り込んでくる。
「日曜日の方が都合がいい。王都の店をいくつか回って、その後、ウィリアム様と合流して、そのお店に行くのはどう?」
「へ?」
何故か自分も行く気満々、さらには他のことまで一緒にしようとしているセオドアに思わず間の抜けた声が出てしまった。
な、何で一緒に行くつもりで話をしているんだ?