逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。
やはりすごく奇妙な状況だ。
アルトワ夫妻やレイラ様との会話に必要な場面で入りながらも、私はずっとそんなことを思っていた。
ホンモノであるレイラ様が〝アイリス〟と呼ばれ、ニセモノである私が〝レイラ〟と呼ばれる。
そしてそれがごく当たり前であるように全てが進められている。
では、何故、レイラ様がアイリスと呼ばれているのか。
それは今だけレイラ様がホンモノのレイラ様であることを隠す為だった。
私とレイラ様は6年前こそ、瓜二つだったが、今ではかなり違う見た目をしている。
そんな私たちがある日突然入れ替われば、間違いなく同一人物には見られない。
結果大きな混乱を招き、しなくてもいい苦労や辛い思いをする可能性があるとなり、今レイラ様と私を入れ替えるべきではないとアルトワ伯爵家は判断したのだ。
それではいつ私とレイラ様を入れ替えるのがベストなのか。
アルトワ伯爵家の人間のみで話し合い、考えた結果、それは私が学院を卒業したタイミングだ、という結論に至った。
学院卒業後、留学でも療養でも何でも理由をつけて、私と入れ替わったレイラ様はここから離れたフリをし、社交界から姿を消す。
そして私を知る者の記憶が朧げになった数年後、表舞台に戻り、今度こそ本当にレイラ・アルトワとして生きるのだ。
数年もめっきり姿を見せなければ、例え私とレイラ様の姿が異なっていたとしても、こんなものだったかもしれない、とみんな思い、大きな混乱は避けられるはずだ。
現在、レイラ様もレイラ様の代わりである私も18歳で、学院では最高学年。
学院生活は残り、半年ほど。
このあと半年だけ、私はレイラ様の代わりをしなければならなかった。
すぐにでもリリーに戻れると思っていたので、この計画が決定した時、かなりガッカリしたが、アルトワ伯爵家には恩があるので、私は素直にこの計画を受け入れた。
そしてレイラ様もまた、私と同様に嫌な顔一つせず、この計画に頷いていた。