君の未来に、ぼくがいたこと。

陽翔の秘密

放課後、陽翔はポケットの中で小さく折りたたまれた病院の診察予約票を握りしめていた。
校舎を出る足取りは重く、胸の奥には言葉にできない不安が広がっている。

スマホを取り出し、母に電話をかける。
呼び出し音の向こうで母の優しい声が響いた。

「おかえり、陽翔。今日の調子はどう？」
「うん、まあ普通だよ。学校も楽しいし。」
「ちゃんと休んでる？ 無理しちゃだめだよ。」
陽翔は言葉を選びながら、病気のことは伏せたまま答えた。
「うん、大丈夫。心配しないで。」

電話を切った後、陽翔の目に小さな涙が浮かぶ。
誰にも言えない秘密が、心の中で静かに重くのしかかっていた。

夜、自分の部屋の机に向かう陽翔。
電気の明かりだけが静かに脚本の紙を照らす。
ペンを握りしめながら、胸の奥にたまった感情が溢れ出した。

「……どうして、こんなに苦しいんだろう。」
目を閉じると、涙が頬を伝い落ちる。

それでも陽翔は深く息を吸い込み、決意の言葉をつぶやく。
「夢だけは、絶対に叶えたい。たとえ時間が限られていても。」

孤独の闇に包まれながらも、心の中の小さな光を守り続ける陽翔の姿がそこにあった。
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