恋とバグは仕様です。 ~営業スマイルで喧嘩して、恋に落ちるまで~
03|恋のレビュー、最終確認
その日の午後。
「ねえ、ちょっと出かけよう」
「うん。どこ行くの?」
「ちょっと、渡したいものがある」
連れてこられたのは、小さな公園のベンチだった。
桜が散り際を迎えている。
「──凛」
「なに?」
「お前と最初に会った日、覚えてる?」
「……あの日? 第一印象最悪だったけど」
「だろ? でも、あの時のお前のレビューがあったから、俺は今、ちゃんと人間やれてる」
「……なんか急に真面目」
「真面目に言うよ」
ポケットから取り出されたのは、小さな四角い箱。
「これ──“本番リリース”前の、最終レビューだと思って」
「……それって──」
「指輪。プロトタイプじゃない。本物」
開けると、シンプルで優しい曲線の指輪が入っていた。
「結婚しよう。これからも、不具合だらけの人生を、二人で書き直しながら生きていきたい」
凛は、しばらく言葉を失っていた。
その目には、涙が浮かんでいる。
「……いいの? わたし、ほんとにバグだらけだよ?」
「お前のバグは、俺の生きがいだよ」
笑いながら、そっと手が差し出された。
「レビューします。喜んで」
その声に、遥人も微笑む。
──ふたりの未来は、まだ“実装途中”。
けれど確かに、同じ方向を向いていた。