あなたの子ですが、内緒で育てます
 デルフィーナがルドヴィク様に『わたくしを王妃にしてくださいませ』と、頼んでいることを知っている。
 けれど、ルドヴィク様は渋っていた。
 他人の意見に流されやすいルドヴィク様が、王妃の地位をデルフィーナに与えずにいてくれている。
 まだ私に愛情を残してくれているのだと――信じたい。

「先程から、暴言ばかり。いくら身内といえど、王妃に対する態度とは思えませんわ」

 毅然とした態度で、二人に言った。
 私が王妃でいる間は、侯爵家にとって利用価値がある。

「王妃を罵ってよいのでしょうか」
「うっ……!」
「ぐっ!」

 父も兄も言葉に詰まった。
 私たちの会話が終わり、護衛のジュストが、スッと前に進み出る。
 彼は私の護衛の一人で、騎士の称号を持っている。
 詳しい身の上は知らないけれど、他の護衛が彼に遠慮がちだったところを見ると、腕のほうは確かなのだろう。
 
「お帰りはあちらです」

 ジュストは淡々とした態度で、部屋の扉を開けた。
 黒髪と黒目、長身で鍛えられた体。
 見るからに強そうだ。
 そんなジュストに圧倒され、二人は口の中でモゴモゴと文句を言いながら、部屋から出ていった。
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