あなたの子ですが、内緒で育てます
「ジュスト。ごめんなさい。身内の恥ずかしい姿をお見せしてしまって……」
「いいえ」

 ジュストは礼儀正しく、私に一礼する。
 デルフィーナが王宮に来てから、私のことを王妃として扱ってくれるのは、護衛のジュストのみとなっていた。
 デルフィーナに 遠慮し、日に日に周囲から人が減っていくのを感じていた。
 私の世話をしていた者はデルフィーナに奪われ、王妃のために用意したドレスはデルフィーナに与えられた。
 先日など、勝手に私の部屋へ入り、アクセサリーやドレスを持ち出すところだったのを、ジュストが目撃し、取り返してくれた。

 ――私が王妃の地位を自分から捨てるまで、嫌がらせをするつもりなのね。

 わかっていたけれど、王妃の地位を捨てられない。
 王妃でなくなった私は侯爵家にとって価値のない人間だ。
 戻ったところで、父や兄から罵倒され、今よりひどい状況になるのは目に見えている。
 
 ――私の居場所は王宮だけ。二人が幸せそうに暮らすのを眺めていることしかできない。

「セレーネ様。食事が進んでいないようですが」
「あまり食欲がなくて……」
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