あなたの子ですが、内緒で育てます
「ロゼッテ、早く起きたほうがいいよ。力を使って心を読まなくても、みんな、ロゼッテのことをわがままだって思っちゃうよ」
「そ、そんなのっ……」
「うん。嫌だよね? 嫌なら、起きよう?」

 手をさしのべ、ロゼッテを起こすと、にっこり微笑んだ。

「勉強でわからないところがあるなら、ぼくといっしょにやろう? ロゼッテはなにが苦手?」
「すうじ……」
「じゃあ、キャンディを使って、数字の勉強をしよう?」

 ロゼッテは素直にうなずき、ルチアノと一緒に勉強部屋へ向かっていく。
 
「ルチアノに任せましょう。ザカリア様、私たちは町の修復計画の話し合いをしなくては」
「ああ、そうだな」

 セレーネが忙しそうに去っていく。
 大臣たちと今から、町の修復計画について話し合うようだった。

「セレーネ! 王妃でもないのに、勝手な真似をしないでちょうだい!」

 セレーネが足を止め、振り返る。
 そして、いつになく、厳しい顔つきを見せた。

「私たちはお妃候補として選ばれ、共に学んできたはずです。あの時、あなたは必死に競い、堂々としていて立派でした」
「またお説教?」

 セレーネは悲しい顔をし、ザカリア様と共に去っていった。
 今日、わたくしは、いくつの背中を見送ったのか。
 平穏な日々が崩れていくのがわかった……
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