あなたの子ですが、内緒で育てます
いっそ、音楽でも聴いて、おとなしくしてもらっていたほうが、周囲も助かるのでは……

「セレーネ。贈り物はどうだ」

 ルドヴィク様は、私が喜んでいると思っているようだ。

「贈り物ですが、やめていただきたいのです」
「なんだと!?」
「私費でなさる分なら、受け取りますが、国庫からお金を出すのは困ります」

 ショックを受けているようだけど、私のほうがショックだ。
 国庫を潤すべく、王宮内の物を売って、金策しているのに、そのお金を使われてしまったのだから。

「どうしても、贈り物をされたいというのでしたら、小麦粉(炊き出しのために)やレンガ(家の修復のために)のほうが、ありがたいですわ」
「では、ルチアノのために、なにか贈ろう」
「結構です。お気持ちだけいただきますわ」
「俺はルチアノの父親だぞ。父親が息子に贈り物をしてなにが悪い」

 私に見向きもせず、デルフィーナのいいなりになること七年。
 国王陛下でなかったら、ジュストに頼んで部屋から叩き出していたかもしれない。
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