あなたの子ですが、内緒で育てます
 ザカリアは、強張った顔をしたルチアノをひょいっと抱きかかえた。

「ルチアノ、気にするな。焦らなくても、いずれお前が王になる」

 さっきまでの元気のよさが消え、ルチアノは無言のまま、ザカリアと共に去っていった。

「俺はお前の父親じゃないのか……?」

 その問いに答える人間はいなかった。
 俺の周りには、人がいなかった。
 護衛すら――王のはずが、いつのまにか、王ではなくなっていた。
 名前だけの王になっていたのだった。
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