あなたの子ですが、内緒で育てます
「なんでも……!」

 ルチアノはまだまだ子供だ。
 なんでもいいと言われて、目を輝かせた。

「それじゃあ、欲しいものを言ってもいいですか? 国王陛下にしかできないお願いなんです」
「うむ。俺にしかできないなら、なおさら、叶えてやろうという気になるな。言ってみろ! さあ!」

 ――ザカリア、残念だったな。

 父と息子の血の繋がりには、勝てないようだぞ?
 勝利を確信したその時。

「ぼくに王さまの位をください」
「お、王っ……!?」

 ザカリアが笑っている。
 だが、ルチアノは笑っていない。

「ぼくが一番欲しいものなんです」

 ルチアノは期待を込めたまなざしを俺に向けている。
 駄目とは言いづらいが、さすがに王位はやれない。
 王でなくなった俺など、なにをして生きていけばいいのだ。

「わかった。ただし、セレーネが俺の妻になるのなら、お前に王位をやろう」

 ルチアノは返事をしなかった。
 驚いた顔をし、ザカリアの手を握りしめていた。

「兄上。それはセレーネに言うべきであって、ルチアノに言うことではない」
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