あなたの子ですが、内緒で育てます
「セレーネ? どうした?」
「いえ、なにもっ……」

 侍女たちは、私をにこにこしながら、見つめていた。

「セレーネ様は、ザカリア様に見惚れていたんですよね」
「わかりますよぉ~! 普段着とは違う盛装のギャップ! つい、ときめいてしまう女心!」

 ひそひそと耳打ちしてくる侍女たち――ザカリア様のほうは、気づいていないのに、なんて勘のいい侍女たちだろう。

「セレーネ様も海の妖精みたいに美しいですよ!」
「ザカリア様と並ぶと、とてもお似合いで、うっとりしてしまいます」

 それを聞いたルチアノが、にっこり微笑んだ。

「うん。お母様とザカリア様の結婚式みたいだね!」
「ルチアノ!」

 慌てて、ルチアノの口を塞いだ。

 ――気まずい。

 そう思ったのは私だけだったのか、ザカリア様は何事もなかったように、私の手をとった。

「セレーネ。俺がエスコートしよう」
「で、でも……」
「ルチアノの勉強もかねて。レディをエスコートできないと、困るだろう?」
「え、ええ……」

 変に意識する私がおかしい。
 ザカリア様は親切でエスコートを申し出てくれているのだから、ここは素直にお礼を言うだけでいいはず。

「ザカリア様。ありがとうございます」

 微笑むと、なぜか、次はザカリア様が動揺していた。

「いや……」
「お母様、綺麗だよね」

 ルチアノがにこにことした顔で、笑いながら言ったかと思うと、どこか遠くを見るような目をした。

「――うん。お母様のほうが綺麗だよ」

 なにかを見たであろうルチアノの言葉に、私は気がついた。
 もしかして、内々のパーティーではないのでは、と。
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