あなたの子ですが、内緒で育てます
「たくさんの人が大広間に集まってきてる」

 ルチアノの目には、今日のパーティー会場が見えるのだろう。
 デルフィーナは、私に恥をかかせるつもりで、このパーティーを開いたのだ。

 ――いいえ、デルフィーナの狙いは、私だけではない。

 質素なドレスを着た私たち親子を笑い者にするつもりだったのだ。

「セレーネ様! 笑顔ですよ、笑顔!」
「怖い顔になってます!」

 侍女たちが部屋を出る時、声をかけてくれた。

「ザカリア様とセレーネ様が並んでいたら、国王陛下夫妻だって、敵いません!」
「ぼくは!?」
「ルチアノ様も」

 ついでのように足されたからか、ルチアノは頬を膨らませていた。

「そうね。負けないわ」

 信頼できる侍女たちを王宮に連れてきて、正解だったと思った。
 大広間に入ると、七年前と変わらない世界が広がっていた。
 懐かしく感じる。

「セレーネ様よ!」
「お隣にいるのって、ザカリア王弟殿下ではなくて?」
「美男美女で素敵ねぇ」
「こう言ってはなんだけど、国王陛下夫妻が霞んでしまうわね」
< 116 / 190 >

この作品をシェア

pagetop