あなたの子ですが、内緒で育てます
 まだ希望はあると信じたい。
 このままだと、私は侯爵家から無能な娘と罵られ、行き場のない身の上になってしまう。 

『ルドヴィク様は、わたくしとセレーネ、どちらを愛していらっしゃるの!?』
 
 ――やめて。その先を言わないで。

 これは幻のはずなのに、私は懸命に願っていた。
 ルドヴィク様、私を捨てないで――と。

『デルフィーナだ」

 満足げにデルフィーナは笑った。

『わかった。お前を王妃にしよう』

 そんな幻が浮かんで――そして、消えた。
 現実が苦しいのだから、せめて、幸せな頃の夢を見せてくれたらいいのに。
 ルドヴィク様が、私だけを想っていると信じていた頃の夢を。
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