あなたの子ですが、内緒で育てます
 ルチアノが傷ついているのがわかった。
 そういえば、最近、眠っている時もうなされていることがあった。
 
「同じ力を持つ兄上は、王宮の中で守られて育った。いつも満たされていたからか、他のなにかを気にすることも、他人を見ようという気持ちもなかった」
「ルドヴィク様は、傷つかないように育てられたということですか?」
「ああ」

 ルチアノは好奇心旺盛で、ザカリア様の領地にいる時から、なんでもやらせてきた。
 だから、見ないほうが、ルチアノにとっては難しいことかもしれない。 
 
「ルチアノを守り、兄上のような人間にするか、ルチアノが傷ついたとしても自分で考えられる人間に育てるか――どちらかだ」

 ザカリア様は後者を選んだのだ。
 そして、ルチアノを信じ、ずっと見守っていた。
 限界がくるまで――

「ルチアノはまだ小さいけれど、もう自分で考えられる子です。ルドヴィク様のように守って暮らすのは無理でしょう」

 ルチアノを抱き締めた。
 そして、背中をなでる。

「ルチアノ。なにを見たの? あなたはまだ七歳で、解決できないことは、大人に相談してもいいのよ?」
「そのための後見人だ」
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