あなたの子ですが、内緒で育てます
「そうだな。ルチアノが妻をもらったら、二人で領地に戻り、静かに暮らすのも悪くない」
「二人で……」
 
 何気なく、ザカリア様は言ったのだろうけど、それが私には、なによりも嬉しい約束だった。

「そんな日が早く来るといいですわね」
「まだ、ルチアノは手がかかる。さっきもジュストに大人用の剣を使わせてくれと言って、駄々をこねていた」
「また、ジュストを困らせて……」

 ルチアノは、ジュストと剣の稽古をしている。
 王の子の力を使わないよう、体を動かす時間を増やした。
 じっとしていると、色々考えてしまうだろうと、思ってのことだ。
 それがよかったのか、ルチアノは明るさを取り戻し、食欲も戻った。
 でも――

「ロゼッテの様子はどうでしょうか」

 人の心を読み続けたロゼッテは、人が話している言葉のように、心の声が聞こえるようになってしまったらしい……
 そのため、ロゼッテは部屋に閉じ籠り、一人で過ごす時間が多くなり、孤独な生活を()いられている。

「七歳の子が一人で過ごすのは、寂しいはずです。ロゼッテをこのままにはしておけません」
「それについては、俺に考えがある」
「考えが?」
「ああ」

 ザカリア様は、それ以上、なにも言わなかった。
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