あなたの子ですが、内緒で育てます
 特別な力を受け継いできた王族には、私が知り得ない方法があるのかもしれない。

「お母様! ロゼッテに花を持っていってあげてもいいかなぁ? きっと退屈していると思うんだ」

 ルチアノが剣の稽古を終え、こちらに走ってきた。

「どうでしょうか? ザカリア様」
「そうだな。ずっと一人にさせておくわけにはいかない」

 そう言うと、ザカリア様は立ち上がった。

「私もご一緒しますわ」
「いや、ジュストだけでいい。セレーネはルチアノといてくれ」
「でも……」
「駄目だ。俺がいいと言うまで近づくな」

 ザカリア様の視線はルチアノを追っている。
 ルチアノを遠ざけておきたいようだった。
 もしかしたら、ザカリア様の特異な力に関係していることなのかもしれない。

「わかりました。待っています」
「そうしてくれ」

 ザカリア様はジュストと共にいなくなった。
 ルチアノは二人の後を追って行きたいという顔をしていた。
 ロゼッテのことが、ルチアノは心配なのだろう。

「大丈夫よ。ザカリア様とジュストなら、ロゼッテを助けてくれるわ。ルチアノは二人を信じているでしょう?」
「もちろん!」
「それなら、大丈夫」

 ルチアノは気にしていたものの、納得してうなずいてくれた。
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