あなたの子ですが、内緒で育てます
 ロゼッテが繰り返す言葉は同じで、中身がなかった。
 現実と夢の狭間の中にいるロゼッテに、声をかける。

「ロゼッテ。今、聞こえないようにしてやる」

 俺の心を読んだのか、ロゼッテは涙に濡れた目を向けた。

「ほんとう? わたしを助けてくれるの?」
 
 クッションが床に落ちた。
 誰も自分を助けてくれないと思っていたのだろう。

「わたし、嘘つきで悪い子なのに?」

 デルフィーナから言われ、嘘をつき続けてきたからか、ロゼッテは自分を悪い人間だと思っているようだった。

「過去のお前に向けられた悪意のすべてを、俺が引き受ける。だから、もう忘れていい」

 俺が頭をなでると、ロゼッテは、ホッとした表情を浮かべた。

「ジュスト。周りにルチアノはいないな?」
「はい」

 ジュストがうなずくのを見て、力を使った。
 一度だけ使える俺に与えられた忌まわしい力。
 『力を奪い、自分の力にする能力』を。
 そして、それは一度奪えば、二度と元の持ち主には戻らない。
 
『お父様……お母様……。ロゼッテのこと、嫌いにならないで……』

 ロゼッテの心の声が聞こえた。
 これが、心を読むという能力らしい。
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