あなたの子ですが、内緒で育てます
「傷が深すぎて、ザカリア様は王宮に戻れないだろうと。けれど、同じ境遇に置かれたセレーネ様の強さを見て、ザカリア様が変わるのではと、俺は期待していました」

 ジュストの勘は間違っていなかった。
 他人の能力を奪い、自分のものにしてしまうという忌まわしい力を持って生まれた俺。
 力を持っていた王族たちは俺を避けた。
 奪われることを恐れたのである。

「長い間、なぜ、力を奪うことしかできない俺のような子が生まれたのか、不思議だった」

 奪った能力を自分のものにしていまうなど、盗人と同じ。
 嫌悪されるだけの能力だと思っていた。

「けれど、ようやくわかった」

 力に溺れた者を救うための力が、王家には必要だったのだ。

「救われたのは、俺も同じだ」

 やっと必要とされた力――忌まわしいだけの力ではなかったと、ロゼッテのおかげで知ることができた。
 これで、すべてが終わった。
 穏やかな日々がやってくると信じていた。
 だが――
 
「ザカリア様! 大変です! デルフィーナが牢屋から逃亡したようです!」

 ――簡単にはいかないようだった。
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