あなたの子ですが、内緒で育てます
 ルチアノと暮らした七年間で、子供の扱いになれたジュスト。
 それは俺もだが、ジュストほどではないような気がする。

「お前は、俺より子供に好かれる」
「そうですか?」

 ジュストは、ロゼッテ 力を使わないようにすることを学んだ自分と、学ばなかったロゼッテ。
 心の声を聞かないように、力を使わずにいることもできる。

「ジュスト。侍女を呼べ。これで、ロゼッテのそばに、侍女を置いても平気だろう」
「かしこまりました。こちらの部屋から、もっと明るい部屋に移しましょうか?」
「任せる」

 俺も変わったが、ジュストも変わった。
 剣だけでなく、子供の扱いがうまくなった。

「ロゼッテ様、失礼します」

 ジュストが、ロゼッテを抱きかかえて外に出る。
 
「明るい……」
「外は明るいですよ」

 安心感からか、ロゼッテは涙をぽろぽろこぼした。

「ルチアノに会いたい……。会って、嘘ついてごめんねって言いたい……」
「ルチアノ様もロゼッテ様に、お会いしたいと言っていました。まずは、身だしなみを整え、食事を済ませてからにしましょう」
「わたしのこと、ルチアノ、嫌いになってない? お母様が、ルチアノたちを殺そうとしたから……」
「それも全部、忘れていいんですよ。ザカリア様がすべて引き受けるとおっしゃられた。だから、今はもう昔とは違うロゼッテ様です」
「……うん」

 ジュストはロゼッテの涙をぬぐう。を侍女たちに預けた。
 セレーネたちがロゼッテのために、花束と花かんむりを作っていますよと、聞かされて、ロゼッテは微笑んだ。
 心の声が聞こえなくなったロゼッテが、無邪気な子供に戻るのは、そう遠くないだろう。

「ザカリア様は、ただ一人に愛されたら、それで満足でしょう。いつ、ザカリア様がセレーネ様にプロポーズするのか、領地の者たちと賭けているんですよ」
「おい。俺の人生最大の決断を賭け事の材料に使うな」

 ――油断も隙も無い。

 そもそも、セレーネの頭の中は、ルチアノのことでいっぱいなのではないだろうか。
 
「ザカリア様。セレーネ様の心を読まないでくださいよ」
「そんなことはしない!」

 心を読む気はなかったが、強く否定すると、ジュストは笑った。

「王宮で、ザカリア様と笑って話せる日が来るとは思いませんでした」
「そうだな。俺もだ」
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