あなたの子ですが、内緒で育てます
「わかっていますわ。ロゼッテを取り戻し、三人で王宮へ戻ろうと画策なさっているのでしょ?」

 奪われてしまったロゼッテ。
 でも、国王陛下であるルドヴィク様が命じたなら、ロゼッテを簡単に取り返せる。
 それに、あの子の力さえあれば、王宮へ返り咲くチャンスを何度だって作れるのよ――! 

「違う」
「え? 違う……?」

 ルドヴィク様の口から出た言葉は、わたくしが考えていたものと、まったく違っていた。

「セレーネとルチアノの三人で暮らすつもりだ」
「え……? セレーネ? ルチアノ? い、今、なんておっしゃいましたの?」
「聞こえなかったか? セレーネを俺の妻に戻し、王妃の位を授け、ルチアノを次の王として育てる」

 それは、わたくしとロゼッテを捨てるということ。
 呆然とし、ルドヴィク様を見つめていると、血のように赤いワインを杯に注ぎ、わたくしに差し出した。

「デルフィーナ。お前も飲むか?」

 ルドヴィク様は自分の言葉が、わたくしをどれほど傷つけたか気づいていない。

「い、いえ……。けっこうですわ……」

 怒りからなのか、悲しかったからなのか――声が震えた。
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