あなたの子ですが、内緒で育てます
「母親だから……」
「私にはルチアノがいる。だから、人として恥ずかしいことはできない」

 ルチアノは驚いた顔をし、私を見る。
 私はルチアノに微笑んだ。
 そして――ザカリア様にも。
 二人は私から、憎しみの心を消してくれる。

「私が二人を赦せば、ルチアノは、将来きっと思いやりある王になるでしょう。そして、ロゼッテも慈悲のある王女に育つわ」

 ルチアノは強くうなずいた。
 ロゼッテも涙をぬぐい、うなずく。

「だから、デルフィーナ。あなたはロゼッテに対して、恥ずかしくない生き方を選んで。もう私たちは王妃ではないのだから、自分の意思で選べるはずよ」

 お妃候補の時も、王妃になってからも、私は実家の侯爵家やルドヴィク様のことを考え生きてきた。 
 それは、デルフィーナも同じ。

「お母様、お願い。お父様のように、わたしを捨てないで」

 最後はロゼッテの一言が、デルフィーナの心を動かした。
 
「わかったわ。命まで奪わずにいてくれて……ありがとう、セレーネ」

 ロゼッテを抱き締め、デルフィーナは生きるを選んだのだった。
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