あなたの子ですが、内緒で育てます
「陛下をお待たせするなんて、本当に無能な妃ね。王妃なら、陛下のそばに控えているものでしょう?」

 ――また、無能。

 そう言いふらしているのは、デルフィーナだと気づいた。
 
 ――デルフィーナが悪口を言いふらすのは、王妃である私を貶め、恥をかかせたいからだわ。

「あら、わたくしが言いふらしたわけではなくてよ? セレーネったら、わたくしの悪口ばかり心の中で言っているわ」
「なんだと!」

 心を読まれ、体が強張った。
 
「恐ろしい女ですわ……。ルドヴィク様、なんとかしてください」
「なんてことだ。早く話を済ませよう」
「ええ、気分が悪いわ……」

 わざとらしく、デルフィーナはルドヴィク様に寄りかかる。
 それを支えるルドヴィク様。

「セレーネ。お前は王妃として相応しくない。よって、王妃の地位を 剥奪(はつだつ)する!」

 ――とうとう、この日が来てしまった。

 私は王妃の地位をデルフィーナに奪われてしまった。
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