あなたの子ですが、内緒で育てます
「新しいアクセサリーもドレスも自分で選べず、周囲に任せていたと、侍女たちが笑っておりました。古い物ばかりを好んで身に付けていたとか」
「そういえば、新調してはどうかと、セレーネに勧めても断られたな」

 ――それは違う。

 ルドヴィク様に何度も説明していたのに、伝わっていなかったのだろうか。
 歴代王妃に受け継がれる装飾品の数々。
 それらは古いが、細工も宝石も素晴らしく、その装飾品を上回る腕のいい細工師がいない。
 王妃が身に付けるものは、ただ新しければいいというものではなく、それ相応の品でなくてはいけない。
 王妃としての威厳を持ちなさいと、お妃教育を受けた時に教えられたはずなのに、デルフィーナは忘れてしまっているようだ。
 
「庭園の花も変えていただきましたわ」
「セレーネは興味もなかった」

 私と一緒に庭を歩いたことも、ルドヴィク様はお忘れになったのだろうか。
 庭園は亡くなられた先代王妃が好まれたと、おっしゃっていた。
 お母様との思い出の残る庭園だと聞いていたから、手を加えずにいたのに……

「やっときたか、セレーネ」
「……おまたせして申し訳ございません」

 デルフィーナは青ざめた顔をした私を見て嗤う。
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