あなたの子ですが、内緒で育てます
 だが、目は冷たい。
 この男、怖すぎるだろう。

「なぜ、セレーネを連れてこなかった! あいつが面倒をみるべきだろう」
「離宮で遊んでいるルドヴィク様と違って、セレーネ様はお忙しい。それに、自分の子だと主張するのなら、そんなセリフは言えないのでは?」
「俺は面倒を見たことがないんだぞ」
「なおさら、いい機会ではないのでしょうか」

 これがいい機会だと!?
 大暴れする子供たちの扱い方がわからない。
 ロゼッテが右に走れば、ルチアノは左に走る。
 カーテンが破れ、クッションの中の羽根が飛び散り、机の上のインクがぶちまけれた。

「やめろ! 止まれ! おとなしくしろ! そうだ。菓子を食べるぞ! 菓子だ!」
「えー。ロゼッテ、お腹いっぱいだし~」
「ぼくも。それより、お絵かきしたいな」

 お菓子で釣っても二人は興味なし、俺に見向きもしないで、暴れまわる。

 ――なんだこれは悪夢か? 悪夢なのか……?

 俺の人生で、ここまで自分の思い通りにならなかったことがあるだろうか。
 
 ――いや、ない。
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