あなたの子ですが、内緒で育てます
 大臣たちはまるで、こうなることがわかっていたのか、動じている様子はない。

「お前たち、兄上を暗殺するつもりだったのか?」
「とんでもない。我々は陛下に変わったことがあれば、連絡するようにと、侍従に伝えてあっただけで、暗殺など滅相もございません」
「濡れ衣です」

 それにしては用意周到過ぎる。
 心を読もうとしたが、やめた。
 大臣たちはタヌキだ。
 心を偽ることくらい、どうとでもできる。
 俺自身が力を使い、疑心暗鬼に陥るはめになるかもしれない。

「陛下のことは、我々におまかせください。そして、ザカリア様は王宮にいたということにしましょう」
「どういう意味だ」
「ここにザカリア様がいたと、他の者に知れると、暗殺を疑われます。民が不安に思っては困る」
「新しい王の補佐をするザカリア様に、暗い噂があってはいけないのです」

 ルチアノという代わりの王が存在し、俺という王の予備が手に入り、兄上が邪魔になった――そういうことなのか。
 大臣たちは恨みもあるだろう。
 だが――

「兄上をなにもできない王になるよう仕向けたのは、お前たちだ。俺はお前たちの傀儡になるつもりはない」
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