あなたの子ですが、内緒で育てます
「デルフィーナ。私がなぜ戻ってきたか、あなたにはわかるのではなくて?」

 優雅に微笑んだセレーネ。
 彼女はまだ二十代後半。
 その美しさは健在だった。
 デルフィーナの顔が憎しみと嫉妬で歪んだ。
 だが、セレーネは動じない。
 二人は王妃を目指し、争っていた関係だ。
 いや、他にも候補者はいた。
 だが、最終的に残ったのはこの二人。
 そして、俺が選んだのは宝石のように美しいセレーネだった。
 
 ――セレーネだったのだ。
 
 だが、今の王妃はデルフィーナ。
 理由は簡単だ。
 デルフィーナが王の血を引く子供を産んだからだ。
 王の血を引く子は特別な力を持つ。 
 デルフィーナの子は王女で、人の心を読む能力を持っている。
 
「セレーネ。お前もこの国の貴族令嬢として生まれた。デルフィーナは王の血を引く子を身籠った。放って置くわけにはいかなかったのだ」
「ええ。そうでしょう。王の血を引く子供は王になる可能性があるのですから」

 やけに物わかりがいい。
 それが、よけい不気味だった。

「もちろん、私の子にも王になる資格があります」
「うん? お前の子だと?」
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