あなたの子ですが、内緒で育てます
 セレーネの後ろにいた小さな人影が動く。
 その小さな人影は、セレーネによく似た銀髪に青い瞳の男の子だった。
 七歳くらいだろうか。
 デルフィーナが生んだ王女、ロゼッテと同じ年頃に見える。

「ルチアノと申します。あなたの子です」
「なんだと!」
「嘘おっしゃい!」

 デルフィーナが声を荒げた。

「お初にお目にかかります。ルチアノです。ようやく父上にお会いできました」

 セレーネによく似て、賢そうで利発な子供だ。
 セレーネはデルフィーナではなく、俺だけに語りかけた。

「その証拠にルドヴィク様。あなたの力は消えたはずです」

 陛下ではなく、昔のように名で呼ぶセレーネ。
 それは王への死刑宣告だった。
 王に相応しい子供が生まれたなら、王は力を失う。
 
「女王になるのは、わたくしの子、ロゼッテよ!」
「ロゼッテ王女とルチアノは同じ年齢です」
「まさか……」
「王宮を追われた時、私のお腹にルチアノが宿っていました。けれど、陛下の愛情も後ろ盾も失っていた私は、この子を王宮で育てる自信がなかった」
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