あなたの子ですが、内緒で育てます
「わかりました。しかし、セレーネ様もこのままでは、危険です。ザカリア様に保護を求めたらどうでしょうか」
「ザカリア様に?」
「少々変わった方ですが、ルドヴィク陛下から守れるのは、ザカリア様しかいらっしゃいません」

 このままでは、私は死ぬ。
 いいえ、殺される。
 ジュストはそう考えているようだ。
 罪をでっちあげることくらい、デルフィーナはなんでもない。

「でも、ザカリア様にご迷惑がかかるわ……」
「逃げられる時に逃げるしかありません。もし、セレーネ様が、王宮から脱出したいとお望みであれば、お助けします。どうされますか」

 王宮に残るか、ザカリア様に庇護を求めるか。
 私が生き延びる方法はひとつだけ。

「……ザカリア様にお願いしましょう」

 守っていただけるかどうかわからない。
 ザカリア様にとって、私は厄介者でしかない。
 引き渡される可能性のほうが高い。
 それでも、逃げるしかなかった。
 これが、夫も地位も奪われ、実家からも見捨てられてしまった私が、生き延びるための唯一の方法だった……
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